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Twice Again

Author:Twice Again
えと、どうもTwiceAgainです。
始めましての方も、そうでない方もどうぞまったりゆったりしていってください。小説の毎日更新は出来ませんが、マイペースにやっていきたいと思います。僕の二次創作は暇つぶし程度にどうぞ。感想やご指摘は歓迎します。
では、どうぞごゆるりと……。


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 「ん……ここは、ベルベットルーム?」
 「再び、お目にかかりましたな」

 蒼に囲まれた空間に長い鼻のイゴールと、ロリ少女エルザがいた。




 「貴方は”力”を覚醒させました。が、夢の中での出来事は現実にも影響を及ぼします。覚醒によるショックで貴方の意識は現実に戻ろうとしています」
 「やっぱり、あそこは夢の中だったのか……ちょっと待て、じゃあ、ここは、どこなんだ?」
 「以前にも申し上げましたが、ここは物質と精神の狭間にある場所……夢と現実の間にあるのでございます」
 「それはこの空間が両方の世界に影響し、影響されるってことなのか?」
 「左様でございます」
 「わかった、話を続けてくれ」
 「覚醒した力は”ノーデンス”ですか。なるほど、興味深い……」
 「ノーデンス……」
 「それは”ペルソナ”という力……もう1つの貴方自身なのです」
 「あれが、俺なのか……? わからないことが多すぎる……ペルソナって何なんだ?」
 「ペルソナとは、貴方が貴方の外側の物事と向き合った時に、表に出てくる”人格”……様々な困難に向かって行く為の”仮面の鎧”とも言ってもいいでしょう」
 「鎧……?」
 「”ペルソナ能力”とは”心”を御する力。”心”とは”絆”によって満ちるものです。他者と関わり、絆を育み、貴方だけの”コミュニティ”を築かれるが宜しい」
 「絆を育む……すると、コミュニティを作り、絆を育むことはペルソナ能力を強くするのか……?」
 「左様でございます。よくよく覚えておかれますよう……」

 ここでイゴールが、さて、と言い話を変える。

 「現実の世界では夜が明けました。これ以上はお引き止め出来ますまい。今度お目にかかる時には、貴方は、自ら訪れる事になるでしょう。では……その時まで……」
 「ああ……また、別の話を聞かせてくれ……」
 「承知致しました……それでは、ごきげんよう……」









 そして――。
 俺が起きたのは朝の6時を猛烈にオーバーしていた11時であった。
 いやしかし、隣を見れば高町が寝ている。流石に同じ布団、と言うことはなかったが、それでも一緒の部屋に寝かすのはどうだろうか。
 ……まあ、今に始まったことではないだろう。
  同部屋なだけなのだから、べつにどうと言うことはない……はず。

 「あ、起きたみたいだね。おはよう渚沙君。結構心配したんだよ、昨日初めて会ったとはいえ、もしかしたら夢死病にかかったんじゃないかってね。けど心臓が動いていたから、大丈夫だったんだけど」
 「おはようございます、忍さん。その、心配をかけてすいませんでした。恭也さんは、大丈夫なんですか?」

 昨日、朝から実家の高町家に連絡が無かったのは、この家には何でも特別な機器があるからだそうで、それを使って身体検査をしていたら何時の間にか時間が経っていたかららしい。それで月村に電話したのが槍で刺される前。
 本来、高町と月村は別の用事で行くみたいだった。

 「よっぽど疲れていたみたいで、まだ寝てるわ。多分……起きるのは午後になりそうね」
 「わかりました。ところで、俺と高町は学校、どうすれば……」
 「8時を過ぎたあたりに桃子さんに電話をして、軽い状況説明をしておいたわ。渚沙君は、確か学校長が叔父さんにあたるそうね? その人に連絡をしておいたわ」
 「ありがとうございます」

 入学して早々だが、1日学校をサボることに。まあ、いいけど。

 「恭也が起きたら、事情を説明させるわ……そもそも、私が恭也が悩んでいることに気づいてあげられなかったのが、原因だったのよ……」
 「忍さん……」
 「ねえ、渚沙君はお腹空いた?」
 「少しくらいは。なんなら作りましょうか? ご迷惑をおかけしましたので……」
 「迷惑だなんて……どんな魔法を使ったかどうかは知らないけど、君は恭也を目覚めさしてくれたわ。――絶対に起きない、死んだ状態となんら変わりない夢死病を、君は」
 「それは、過大評価ですよ。汝の意思するところを行え。それが全ての法にならん、です」
 「……何か、隠しているわね?」
 「男も、ミステリアスな方が魅力的じゃないですか」
 「そうね。でも、ウチの恭也には勝てないわね」
 「いずれ、勝ってみせますとも」
 「それってつまり、なのはちゃんをゲットしたいってこと? それともウチのすずかかしら?」
 「どうしてここの人たちはすぐにそれに結びつけるんですか……それに、2人とも俺なんかとは釣り合わない人でしょう」
 「謙虚ねぇ……汝の意思するところを行なえ、じゃないの?」
 「それが俺のルールになるわけじゃないので」

 もっとがっついたら? 恭也は草食系だったから、苦労したわ、と惚気話を聞かされた。








 はてさて、何処から話そうか。
 まずは、昨日のことから整理しよう。
 俺達が夢の世界に堕ちた後――月村と忍さんが帰ってきて、俺達が寝ているのに驚いたそうだ。
 で、この家にある機器を使って検査をしたが、心臓は動いていたので大丈夫だった。だが、脳が以上に活動していたことにまた驚いたらしい。
 月村はその後俺達の布団の用意をしてくれて、帰ったようだ。
 忍さんは恭也さんに機器をまた使ってみたところ、心臓が動き始めているのを確認し、高町家と月村に連絡をした。
 そういえば、と。
 俺と高町を布団まで運んだのは誰だろう?
 どうやら恭也さんはずっと寝ていたみたいだし、月村にはそんな力があるとも思えない。では忍さんなのか……? 
 なんか、違う気もするし……う~ん、謎だ。
 そして、夢の世界については、また今度考える事にしよう。



 高町と恭也さんが目覚め、先ほど忍さんに振舞った料理を食べ終える頃には気力を取り戻していた。

 「高町……どうやら恭也さんは俺のアレの事は忘れているようだが、お前はどうだ?」
 「アレ? あれって、夢見君の……確かペルソナっていう能力?」
 「そうだ。これは、出来れば内緒にしておいてくれないか? 俺達だけの秘密だ」
 「2人だけの……秘密……? なんか、良いね!」
 「そうだ、格好良いだろう?」
 「うん! 絶対に秘密なの!」

 ふむ……高町の詳しい事については、恭也さんに聞こう。恐らくだが、月村、バニングス、八神の3人はこちら来るだろう。そのときに、恭也さんに聞こう。高町は居ないほうがいい。

 「む……2人とも、私達に何隠し事してるのかな? 気になるな~、ねえ恭也、本当に思い出せないの?」
 「ああ。どうも記憶が曖昧だ……何かと戦っていたという事はわかるんだが、なのはと渚沙君が来て、どうやって助かったのかがな……悪いな、忍」
 「いや、いいわ……聞いたって、多分私には何にもならないし……それに下手に知ってしまうと、辛い事が増えるだけだもの……」
 「忍……」
 「恭也……」
 「すいません、まだ真昼間ですよ? それに俺達いるんで自重してくださいよ……」

 なんでそんな熱の篭った瞳で見つめ合ってるんですか……。

 「「「こんにちはー!」」」

 と、ここでどうやら3人が来たようだ。

 「皆来てくれたんだ! 夢見君、行こう!」
 「悪い、俺ちょっと恭也さんに聞きたいことがあって」
 「そうなの……じゃあその話が終わった後に!」
 「おう」

 高町は玄関に向かって行った。多分、この部屋とは別の部屋に行くだろう。

 「で、話ってなんだ?」
 「率直に聞きます――恭也さん、夢死病を発病したのは、高町が原因じゃないですか?」
 「……どうして、そう思ったんだ……?」
 「色々と、です。忍さん、今、赤ちゃんが出来てたりしませんか?」
 「良くわかったわね、もう1ヶ月は経ってるわ。けど、どうして?」
 「冷蔵庫にあれだけレモンが入ってたら、そりゃあ……ね?」
 「うっ……そうね」

 そして、同様にしてトマトジュースが置かれていたのが妙に気になった。

 「そして恭也さん、俺の憶測なんですが、高町は昔に……事故に遭ったりしてませんか?」
 「……! ああ、そうだ。あれは――俺の責任だ。俺が、もっとちゃんとなのはの事を見てやっていれば……」
 
 これで、やっと――全てが繋がった。

 「その事故について、詳しく教えてくれませんか? 出来れば、その事故したせいで――高町が後遺症を負ったとか、そんなのも含めて」
 「……気づいていたんだな、君は」
 「ええ、まあ」
 「君の推測どおりだよ。まだなのはが小学校の時に、人身事故にあった。車に、轢かれた。俺が、すぐ傍にいたのに……!」
 
 ふと、目を離した瞬間だったらしい。
 幼い身体は、宙に浮き、叩き付けられた。
 その後遺症のせいで。
 
 「そのせいで、なのはは脳に傷害を負ってしまった。そのせいで、なのはは普通の人より精神の発達が遅れてしまった。そのせいで、俺は……俺は……!」
 「恭也……」
 「恭也さん……」
 「俺は……怖いんだ。忍の中にいる子供が生まれて、そして大きくなって……また守れないんじゃないかって……人を、大切な人を守るために父さんから学んだ剣術だって……役に立たなかった……なのはを、守れなかった……だから、俺は悩んでしまったんだ……」

 それは、葛藤であった。
 懺悔であった。
 苦しみであった。
 後悔であった。
 痛みであった。
 
 「恭也さん……俺みたいな奴が、言っても無駄かもしれませんけど……未来は、まだ決まってないんですよ?」
 「…………」
 「そりゃ、もしかしたら事故するかもしれない。けど――事故しないかもしれない」

 シュレディンガーの猫のような、そんな感じだ。蓋を開けるまで、わからない。
 明日になってみないと、わからない。

 「だから、これは貴方のせいかもしれないけれど、それでも――次の、自分の子供を守ってあげましょうよ!」
 「……!」
 「こんな世間の苦い汁も飲んだこともない若輩者の台詞なんて、陳腐なものですが、それでも、言わせてください!
 恭也さん、未来は、明るく輝いているから、楽しみなんです! 暗い考えだったら、何もかも上手く行きませんよ!」
 

 ――だから、未来に希望を!




 「……ふぅ……ありがとう、渚沙君……君のおかげで、幾分、楽になったよ」 
 「いえ……礼を言われるほどの……」
 「君は少し謙虚だね。だが、素直に受け取ってくれ、ありがとう。助かった」
 「……こちらこそ、ありがとうございます……」
 「お礼に、何か1つだけ願いを聞こうか」
 「と、とんでもない……! では、1つだけ、いいですか?」
 「ああ、何でも言ってくれ」

 「じゃあ――」



























 バニングスが乗り込んできた――!

 「あんたなのはに手を出してないでしょうねっ!!!」
 「はあ!? いきなり何なんだ! こっちはシリアスの雰囲気なんだよ! まだコメディになるには早いんだよ!」
 「知らないわよ、そんなこと!」

 恭也さんの告白を、そんなこと扱いか。
 知らぬが仏、ということで。

 「てか、何でそうなったんだよ……」
 「それについてはウチが説明するで!」



 大体こんな会話だったらしい。
 
 「恭也さん、大丈夫だったの?」
 「うん! さっきね、夢見君のお料理を食べてたから、もう大丈夫だと思うよ!」
 「あれ? ゆめみん居るん?」
 「うん、今ねお兄ちゃんとお話してるの」
 「大事な話なんか?」 
 「そうみたいなの」
 「ん……」
 「ということは、昨日夢見はここに泊まったわけ?」
 「うん、そうだよ。私が運んだんだ。結構筋肉がついて、がっしりしてたかな」
 「流石すずかね……」
 「なのはも運ばれたの?」
 「うん、お姉ちゃんが」
 「忍さんに……あとでお礼を言っておくの!」
 「そうしてあげて。きっと喜ぶから」
 「なあ、もしかしてなのはちゃんは一緒に寝たんか?」 
 「んー、そうなの。一緒(の部屋でだけど)だったの」
 「! 変なことされなかった!?」
 「(変なこと……? あったけど、ペルソナのことは黙っておいた方がいいし……)えとね、(ペルソナが)凄かった? なの」
 「「「!!!???」」」
 「(なのはが、まさか大人の仲間入り!?)」
 「(夢見君、そんなことをしちゃう人だなんて……)」
 「(まさか、ウチの妄想が実現するやなんて……ゆめみん、レイプ系は嫌いって言ったやん……熱き性欲(リビドー)には、ゆめみんの屈強な精神も負けるんやな……)」




 そんなこんなで、乗り込んできた。
 まさかペルソナの、というか夢の事を黙っておくように言ったのが、裏目に出るとは……!

 「それはお前等の勘違いだ。俺も高町もずっと寝てたし、違う布団だったし、そもそも忍さんは徹夜だったんだから気づいていると思うし、俺は前にも言った通り、そういう系統は嫌いなんだ」
 「流石に一緒のお布団は駄目だと思ってね、でも、部屋が無いから仕方なく一緒の部屋に寝てもらったのよ。そういう事は一切なかったわ……けど、3人とも、そういう事に興味があるのね……ふふふ」
 
 誤解は解けたものの、忍さんの笑い声が、怖かった。















 この後俺は、いや、俺達は翠屋に向かった。
 無論、恭也さんと忍さんもだ。
 雨が降っていた。そういえば、あの夢の世界でも雨は降るのだろうか。
 そうやって考えるのは、初めてだ。
 最近は初めてばかりだ。
 今までに、ない。
 
 翠屋に着いてから、高町の親父さんに許可とって、恭也さんからは、例のものを頂いたし、それに加えて、
 
 「君になら、なのはを任せられるな」

 とか。
 いや、その……。

 …………。

 そういえば、バイクは翠屋に置きっぱなしであった。迷惑をかけてしまっただろうし、今日は速やかに帰ろう。
 と、思っていた時期が、俺にもありました。

 「桃子の手料理だ、昨日は軽く済ませたが今日はたくさん食べてもいいぞ!」
 「あ、はい……頂きます……」
 「本当、恭也があの病気にかかったときは、危なかったわ……私もなっちゃいそうだったわ……」
 「桃子、心配するな。俺がついている」
 「あなた……」
 「桃子……」

 この親にして、この子あり。
 ぴったりだろう。

 夕食、美味しかったです。高町は良いお袋と親父さんを持ってるな……色欲を抑えてほしい……年齢を考えてほしい……。

 「折角だから風呂にも入って行きなさい。何、心配しなくてもいいよ」
 「何を心配しろと……?」

















 カポーン。
 風呂に入れさせてもらった。やけに広い、あと2人は余裕で入りそうな、そんな大きさ。
 バニングスと八神は帰って行った。行ったのだが、八神が高町に言った『風呂』という単語が何故か脳裏から剥がれない。バニングスが呆れた、というか、何とも頭が痛そうな表情を浮かべていたのが、さらに興味を引いた。

 「まあ…スルーで」

 夢死……じゃない無視しよう。
 気にしてなんかいられないからな、八神の言うことには。
 そう言えば、長寿軒に行った時に、エラくバニングスと八神が俺の1人暮らしについて聞いたきたのは夢死病にかかる危険性があったせいなのか。だが、知らなければかからないって言うし……けど、もしかしたら知っていた可能性があったので、そこは彼女達の優しさであろう。うん。

 頬を1滴の雫が垂れる。
 それは、蒸気のせいなのか、それとも自分の汗なのかわからなかった。
 
 けど――嫌な予感がする。

 昨日みたいな本能に訴えかける……あ、でもこれも本能に訴えかけてるような……。
 とにかく、なんか、今後の俺がどうにも変態に見られそうな、八神に言われた事が実現しそうな、そんな気がする。

 ガタゴト、と脱衣所から物音。
 ガラガラ、と浴槽へ続くドアを開ける音。
 そして、この空間を反響して俺に届いた音。
 
 「し、しつれいします……」

 紺色と、白い肌のコントラスト。
 胸前にある存在のせいで歪んで見える『なのは』という文字。
 栗毛色と、あどけなさを残した顔。
 そして、少しだけ頬を赤らめている。

 「…………はっ?」

 少しの沈黙を破って出たのは、そんな気の抜けた声だけ。
 落ち着け、落ち着くんだ、俺。
 こんな時は素数を数えるべきだが、今は夢の中に出てくるあの形容出来ない化け物の事を思い浮かべろ。

 うぇ……SAN値が駄々下がりだ……。

 「もしかして、なのはとお風呂に入るの嫌だった……?」
 「ぜ、全然嫌じゃないよ!? 寧ろ嬉しいくらいだ!」

 言った後で、後悔とベクトルの違う後悔をする。
 やっちまったぜ……。
 

 でも、その時の高町の表情は――酷く脆そうだった。

 
 まるで、自分が良い娘で居なければならないという脅迫にも似た考え。
 そうしないと、自分が壊れてしまいそうな。
 そうしないと、自分の居場所がなくなってしまいそうな。
 そうしないと――。
 
 
 それは、酷く、歪であった。


 「じゃあ、入るね」

 一転、向日葵のような笑顔、いや菜の花のような笑顔か。
 一瞬、連想。

 「ちょちょちょ待ってくれ!? どうして、そうなったんだ!?」
 「……?」

 首を傾げながらも、浴槽に入ってくる。
 幸いにも、腰にタオルを巻いている俺。けど、大分危険。

 「…………」
 「…………」

 気まずい、長い沈黙。
 後ろから抱き付かれた。
 
 むにゅり。

 そんな擬音が聞こえそうな、柔らかいおっぱいを布越しに感じる。
 
 「……ありがと、夢見君。お兄ちゃんを助けてくれて……」

 沈黙を破り、零れたのは微かな声。

 「……ああ……」

 この家の、いやこの市の住人は、優しい。
 優しいから、お礼は受け取らないと、逆に申し訳なくなってくる。

 「これは、そのお礼。はやてちゃんとお母さんに聞いたんだ……男の人を喜ばすにはどうすればいいかって」
 「…………」
 「ウチはね、頑張った人にはご褒美をあげるっていう家訓があるから」
 
 あの人達の入れ知恵か……!
 高町は、恐らくまだ貞操観念とか、男女の在り方を精神的に理解していない。
 それは、きっと――恋だの愛だのを、知らないんだろう。

 「夢見君は、嬉しい……?」
 「……まあ、嬉しい」
 「……ありがと」

 いやこちらこそ、ご馳走様です。

 「けど、他に何か言いたげだな」
 「うん。あのね、多分夢見君は優しいから……きっと」


 ――1人で、戦おうとするんじゃない?

 
 「ううん、きっとそうするしかないと思うの。だって君以外にはあんな力を持ってる人はいないから……」

 でもね、と高町は続ける。

 「少しはね、頼ってくれてもいいんだよ……? 無力かもしれないけど、邪魔かもしれないけど、疲れたらね


 ――なのはを、頼ってよ――






 零した声には、少しの悲しみが篭っていて。
 それが俺には、少し辛くて。
 けど、きっと、高町には……もっと辛いことなんだろう。

 だから、俺は。

 「ありがとう、高町。優しいんだな」

 気づいたことなのに、嘘を言葉で隠し。

 「そんな事無いよ……」
 
 そんなことしないのに、口は嘘をばら撒く。

 「疲れたら、高町を頼る事にするよ。これから俺達は夢死病の原因を解明する……夢死原因解明隊だ」
 「ふふ……なんか、格好良いね」
 「だろ?」
 「うん……」

 高町の言葉には、もう悲しみはなくて。
 その変わりに嬉しさが篭っていた。


 ――激しい自己嫌悪。

 全くもって、自分が、嫌になる。

 「よろしくな、高町」
 「よろしくね、夢見君」




 ――頭の中に、心に響くように、声が聞こえる。

 硝子の、割れる音。







          我は汝……汝は我……

        汝、新たな絆を見出したり……

汝、”愚者”のペルソナを発する時、我ら、汝に更なる祝福を与えん……

 






 心の中に新たな絆を感じる。

 これが、イゴールの言った”絆の力”なのだろうか……?
 コミュニティの力こそが、ペルソナ能力を伸ばしていくらしいが……
 コミュニティ……この、高町と結んだ『夢死原因解明隊』のことだろうか……?

 …………。

 なんだか、眠い……。
 この感触は、未来永劫忘れないようにしよう。
 風呂を出ようとした俺は、高町の存在に内心ビクつきながらも立ち上がる。

 「ま、待って!」

 右手を引っ張られる。
 予想外であります。
 バランスを崩したであります。
 総攻撃にご注意であります。

















 その後のことは、覚えていない。  
 気が付けば、寝る用の、恭也さんの服を借りて部屋にいた。

 …………。
 
 今は眠い。早く寝てしまおう……。
 桃子さんが用意してくれたベッドで、さっさと寝てしまおう。
 あの娘に会えるかな……。

















 自分の部屋に戻って、高町なのはは考える。

 ――どうしてなのはは、何も出来ないのだろう。

 一週間前に引っ越してきた男の子の夢見君。
 お兄ちゃんを、助けてくれた人。
 無力ななのはを、助けてくれた人。
 
 なのはは、どこまでいっても無力なんだ。
 何も出来やしないんだ。
 家族が苦しんでいるときだって、何も出来ないんだ。
 それが出来ていたら、お父さんが怪我をしたときに、きっとなのははお母さんもお兄ちゃんもお姉ちゃんも、きっときっときっと辛い思いをしなくて済んだんだ。
 なのはは、無力なんだ。

 「ううぅ……ああぁぁ……」

 なのはが悪い子だから、だからお兄ちゃんは夢死病にかかったんだ。
 なのはが悪い子だから、だから、きっと夢見君は、辛そうなんだ。

 「ゆめみ……くん……」

 夢見、渚沙。
 なのはが悪い子だから、迷惑をかけてしまった。
 さっきお風呂では、優しく言ってくれたけど、本心はどうなんだろう。
 
 ――うざい。
 ――邪魔。
 ――いてほしくない。

 心の中の悪魔がそう囁く
 なのはの精神を抉るように、削り取るように、壊すように。

 「ぁぁ……ぁぁ……!」

 涙が止まらない。
 どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、 どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、 どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、 どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、 どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、 どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう――。



 いあ、いあ、はすたあ、いあ、いあ、はすたあ――

 涙と悪魔の囁きで疲れた私は、すぐに寝てしまった……。










 奇しくも、俺と高町が寝たのは、同時であった。























 「……ここは、夢の中……」

 気づけば、また草原の中にいた。また違和感と共に。

 「これ、恭也さんから貰った……」

 一振りの日本刀。
 シャドウ相手には効果が無いということは、恭也さんが証明したが、それでも一時的な自衛手段にはなる。
 だが、何故あるのだろうか。追い追い考えることにしよう。
 鞘から抜く。
 空の太陽の光を浴びて、刃はキラリと輝いた。

 ――ブンッ

 一振り。
 自然と手に馴染む。
 これなら、と。

 ポツポツ

 「雨……か?」

 初めてだった、雨が降ったのは。
 そうか、そういうことを考えたからか

 「なんだ、これ……?」

 さてあの娘を探そうかと振り向いた瞬間。
 
 一軒家。
 そして、それは、高町家だった。

 「もしかして、また誰かが……!」

 桃子さんも、士郎さんも違う。恭也さんはもう吹っ切れたし……そしたら、高町か……?

 「クソ厄介な……!」

 何かがわかったんだ。恭也さんはあのシャドウを数体呼びよせた程度だったが、高町は家ごとこの夢の世界に生み出してしまった。推測に過ぎないが、悩み、苦痛が大きければ大きいほど、どうやらこの世界への影響は大きくなるようだ。

 「とりあえずは中に入ろう……」
 
 ドアを開ける。
 そこには、あの優しい穏やかな風景など、微塵もない、暗黒の世界が形成されていた。
 どこまでも、まるで宇宙のように、黒。
 全てが、黒。

 「……? 何か、聞こえる……」
 
 泣くような、縋るような、女の声。
 耳を澄ませば、それが誰のものかすぐにわかった。

 「高町……!」
 「うっ……うっ……ぅぅ……誰……? ここは、なのはの居場所……なのはには、ここがちょうどいいの……」
 
 だから、
 邪魔しないで――!

 闇より出てくるは数体のシャドウ。前のあの這うシャドウとは被っている仮面が違う奴がいるが、空中を浮いているシャドウもいる。仮面は同じだ。
 恋愛、のアルカナの、仮面。
 知識は、不思議と浮かび上がってきた。
 前の奴は皇帝だったらしい。

 「ペルソナッ!」

 あの五芒星が描かれた石が蒼い焔が迸り、カードに変わる。
 それを、砕く。

 「ノーデンスッ!」

 
 

 












 「くそっ……!」
 
 空中のシャドウをノーデンスが切り裂く。
 地を這うシャドウを刀が切る。
 しかし、すぐに再生する。

 「これじゃあキリがねえ……!」

 ノーデンスに地を這うシャドウを倒させにいけば、その間に空中のシャドウは数を増やす。
 
 考えろ、考えるんだ。
 ヒントは近くにあるはず。
 何故、普通の刀じゃ倒せなくて、ペルソナの武器や肉体、能力では倒せるのかを。

 「……! もしかして」

 シャドウに噛み切られ、血を流している。その血を指につけ、手の平に五芒星と瞳を描く。
 そして、刀を握り直す。
 
 一閃。

 ノーデンスの打ち漏らした空中のシャドウを切り伏せる。
 シャドウは、一つ一つの微小な粒子になり、消えていった。

 「やっぱり、この紋章が……!」
 
 これが、シャドウを滅する力の源。
 名前は知らない。あの娘なら知っているだろうか。

 「この調子でどんどん行くぞ、ノーデンス! ブフッ!」

 駆逐する。
 シャドウを滅する。
 何の躊躇もせず、ただただ切り伏せ、力を行使する。

 ――そして。

 
 「はあ……はあ……はあ……やって、やったぜッ! 高町なのはッ!」
 「どうして……? どうして、君は、なのはの邪魔を……するの? なのはは悪い子なんだ。あんな明るいところに居ていいはずがないんだ、なのはにはこの、真っ暗で、ただただ無意味な空間がお似合いなの……だから、だから、だから……もう、あっち行ってよっ!」

 赤と黒。
 2つの焔が交じり合い、高町を包み込む。
 それは、俺のペルソナ召喚とは、似て非なるものであった。

 「――ハスターッ!!!」

 巨大な……卵。
 ハスターと呼ばれた怪物。
 ヒビ割れたと思ったら、腕が高速で伸びてきて、ノーデンスを壁に叩き付ける。

 「ぐぁ……!」

 どうやらペルソナがダメージを負うと、術者本人のもダメージは帰ってくるのだろう。
 だが、幾分勢いや威力は収まっているところを鑑みるに、どうやらペルソナを介す事でダメージは減るようだ。

 鋭い2つの眼光が、睨み付ける。

 「悪い子は……言う事を聞かない子には、お仕置きしなきゃいけないの……なのはがそれをする権利なんてあると思えないけど……それでも、なのははずっとここにいなきゃいけない。誰にも迷惑をかけちゃいけない。良い子でいなきゃいけなかったんだ。でも、出来なかった」

 「くそっ……ノーデンス!」

 一時的に石の形に戻す。腕の隙間から零れ落ちる石をキャッチし、あのハスターと呼ばれた敵に向かって疾走する。

 「良い子でいたら、みんな傍にいてくれる。良い子でいたら、誰も怪我なんてしない。良い子でいたら、いたら……お兄ちゃんは夢死病にかかることなんてなかった! 君が傷つくことなんてなかった! なのはが、なのはが……」


 ――生きているから――

 





 「ふざけんなッッッ!!!」
 「!?」
 「さっきから聞いてりゃ、難儀事ばっかし言いやがって! てめーは子どもなんだよ! まだまだ子どもなんだ! なら子どもなら子どもらしく、親なり兄妹なり家族なりに甘えろよ! それが、てめーにとっちゃ迷惑って考えられることかも知んねーけど、家族にとっちゃ、眼に入れても痛くない娘なんだ! 妹なんだ! お前が迷惑だと思ってることが、万人への迷惑だなんて思ってんじゃねーーよッッッ!!!」
 「……でも!」
 「でもも、そんなの関係ねーよ! 俺は恭也さんに聞いたんだ! お前が小さい頃の事故の影響で気持ちがまだ成長してないってことを! なら、それなら、吐き出せよ! 子どもの、自分の気持ちを! 家族を信じろよ! 力になってくれるんだ! もっと、もっともっともっともっと! 家族を頼ってやれよッッッ!!!」
 

 「ああ……ああ……あああああああああああ!!!!!」


 「ペルソナッ! いくぞ、ノーデンスッ!」

 アレはきっと高町の願望……つまりは”夢”。
 心の壁――良い子であろうとする故に、殻に閉じこもり、けれど、大人になりたくてもなれない、歪な身体。腕だけが異常発達した奇体。高町なのはが生み出した心の願望(闇)
 望んで止まなかった、けれど、歪なほどに精神は達観していた。
 したいのに、心が拒絶する。
 それが積もりに積もって、今回のこの夢の原因を生み出した。
 きっかけはわからないが、引き金を引いたのは誰だか知らないが。
 だけどきっと、これは狙われた犯行

 「うおおおおらぁぁぁあああ!!!」

 ノーデンスと共に、殻をぶち破る。
 
 「ノーデンスッ!」

 カッ!

 現われた本体を氷付けにする。
 これで、終幕だ。


 ……疲れた、けどまだする事がある。
 


 だがこうして、ハスターとの戦いは終わった。



















 「おい、起きろ、起きろ高町」
 「んにゃ~……あと1光年……」
 「光年は距離だ。人類が宇宙を1光年進むまで眠るつもりか」
 「うん……」
 「うんって、お前なぁ……ん?」

 起きてるだろ、きっと。

 「ば、ばれた……?」
 「バレバレだ」
 「……ごめんなさい」
 「なんで謝るんだ?」
 「だって、傷が……」
 
 高町が言ったように、俺はシャドウ達と戦ったせいで酷く身体がボロボロであった。服はかなり破けているし、血まみれになっている箇所も結構ある。だが、それでも、それは俺が気づくのが遅かったせいだ。もっと早く、あの紋章について気づいていれば、こんなにも怪我をすることはなかった。

 「よって、俺の責任だ」
 「そんなわけない……なのはのせいだよ……なのはが、悪い子だか」

 ていっ!

 「にゃ!? いきなり何するの!?」
 「お前が悪い子なら、おおよそ全世界の人は悪い子だ。それにもっと悪い子だっているんだぜ? お前がした悪いことっていうのは、美由紀さんのケーキを俺に食わせたこととか、俺の分のデザートを盗ったこととか、バニングスと喧嘩をすることを言うのか?」
 「…………」
 「お前より俺の方が悪い子だろ。結構身勝手だし、それに本気でぶん殴ったり、喧嘩なんて中学んときはしょっちゅうだったぜ?」
 「夢見君も、悪い子なの……」
 「も……?」
 「なのはは、悪い子。良い子になろうとして、なれなかったの。けどね、悪い子だって、すること全部が悪い事じゃないの。きっとね、良い子になろうとしてるから、良い事をしてるに決まってるの。だから、なのはは良い事をする悪い子なの」
 「ふぅ……まいったな、こりゃ」
 「それでね、夢見君……ううん、渚沙君、なのはの事を、名前で呼んで?」
 「な、なんで……?」
 「甘えるんだったら、やっぱりそんな他人行儀な呼び方じゃダメだと思うの」
 「俺は家族に甘えろって言ったんだがな……」
 
 恭也さんも悩んでるから夢死病にかかったんだし。

 「……そのね、ちょっとだけ、怖いんだ……やっぱり、昔の……お父さんが大怪我しちゃったことをね、思い出しちゃって……」

 高町にしろ、恭也さんにしろ、士郎さんの大怪我は精神に大きなダメージを与えたらしい。
 しかし、女性は強し、といったところだろう。桃子さんも美由紀さんも、強い人だ。

 「……だから、ダメ……?」

 そんな顔されたら、ダメって言えないだろうさ……。

 「わかった、わかったよ。たか……なのは。これで良いんだろ?」
 「ありが……とね……渚沙君……ぅぅ……」
 「泣くなって!? 俺が悪いみたいじゃんか!」
 「けど、涙が出てきちゃって……」
 「ああ、もう……」

 けど、何故だか幸せで。
 これが、絆の暖かさなのか、と思った。


 ――声が響く。




          我は汝……汝は我……

         汝、新たな絆を見出したり……

汝、”恋愛”のペルソナを発する時、我ら、汝に更なる祝福を与えん……

 



 「改めてよろしくな、なのは」
 「うん、よろしくなの、渚沙君!」

 ところで、あの例の石が2つに増えていたんだが、どうしようか?

 「なのは、これやる」
 「これって、あのペルソナ!って言うときの……でも、1つしか無かったんじゃないの?」
 「何か増えてた」

 怖い。

 「ありがと……うん、行くよ……ペルソナッ!」

 恋愛のタロット。
 カードを祈るようにして、掴み、砕く。

 「ハスターッ!」

 蒼が迸る。 
 焔の中から、先ほどのエッグマン(ウォーマン?)とは違う容姿。
 
 1人の少女が祈りを捧げ、その両手には鎖が巻きつき、身体とは離れた大きな両手に繋がっている。
 先ほどのペルソナと結構似ている部分が見られる。

 「これが、私のペルソナ……よろしくね、ハスター」
 「ようやくこれで、俺達『夢死原因解明隊』の活動がスタートできるな」
 「うん! ……あ、でも、これってアリサちゃんとかすずかちゃんとかはやてちゃんには、やっぱり……」
 「ああ、秘密だ……けど、いつかきっと話そう。これは今は俺と高町でしか出来ないことだ」
 「うん……ってだからなのはだよ~!」
 「わ、悪い……」
 「もう、えへへ!」

 そうやって笑うなのはは、可愛かった。





















現在のステータス 魅力:2→2.5 頭脳:2 寛容さ:2.5 変態度:3 勇気:2

 なのはの中に淡い気持ち……→魅力が0.5UP


コミュニティ『愚者』、『恋愛』の絆を結んだ!
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